アストロズから始まったサイン盗み疑惑ですが、あらゆる方面に飛び火し、さらにはレッドソックスにもサイン盗み疑惑が浮上。
MLB機構によるアストロズの調査が終わり、球団に約5億5000万円の罰金、ヒンチ監督とルーノウGMに1年間の職務停止処分が下され、これを受け球団は2人を解任した。
さらに、今季からメッツで監督を務める予定であった元アストロズのベルトラン監督も現役時代に深く関わっていたとして、球団が解任した。
これからレッドソックスの調査を始めるという流れの中、レッドソックスのコーラ監督も解任された。
そんな急展開を見せているサイン盗み騒動をまとめてみました。
メジャーのサイン盗み疑惑、監督3人が解任処分
今オフ、MLB(メジャーリーグ)を揺るがせたアストロズの「サイン盗み疑惑」。アストロズは2017年、球団初のワールドシリーズ制覇を成し遂げましたが、当時アストロズに所属していたマイク・ファイアーズ投手らが、この年と翌2018年の一時期に、チームぐるみで相手のサイン盗みをやっていたと“告発”。
その手法というのは、本拠地ミニッツ・メイド・パークの外野に設置したカメラで相手捕手のサインを盗み見て、音で打者に球種を伝えていた、というものです。映像解析によるサイン盗みはMLBが禁じている行為で、この証言はファンに大きな衝撃を与えました。
MLBはさっそく調査に乗り出し、13日(日本時間14日)、コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は「そういう事実があった」と“クロ認定”。関係者の処分を発表しました。
アストロズのジェフ・ルーノーGMとAJ・ヒンチ監督には、1年間報酬なしの停職。アストロズには2020年・2021年のドラフト1巡目と2巡目の指名権剥奪と、罰金500万ドル(約5億4700万円)の厳しい処分が課せられました。特に2年間ドラフト上位指名権を奪われることは、チーム編成上、非常に大きな痛手となります。
これを受け、アストロズはルーノーGMとヒンチ監督の解任を発表しましたが、騒動はこれだけで止まりません。翌14日(日本時間15日)、レッドソックスはアレックス・コーラ監督を解任しました。
コーラ監督は2017年、アストロズのベンチコーチを務めており、今回のサイン盗みの首謀者とも言われています。2018年からレッドソックスの監督に就任。1年目にしてワールドシリーズを制し、名将だと評判になっていましたが、レッドソックスでも映像を使ったサイン盗みを行っていたのでは? という疑惑が浮上。評価は一変しました。
コーラ監督の名前はMLBの調査報告書にも上がっており、本人はもちろん、レッドソックスにもMLBから処分が下るのは必至と見られていて、チームが先手を打って処分した形になります。
さらに16日(日本時間17日)、今度はメッツが「選手時代にサイン盗みに関わっていた」として、元アストロズのカルロス・ベルトラン監督を電撃解任。ベルトラン監督は、昨年(2019年)11月に就任したばかりで、新監督が1試合も指揮を執ることなくチームを去るという異例の事態になりました。
アルトゥーべとブレグマンが電子機器使用を否定
チームの主軸であるアレックス・ブレグマン、ホセ・アルトゥーベ両内野手にはユニホームの下にサイン伝達のための、ブザーのような電子機器をつけていたという噂が浮上している。2人は18日(日本時間19日)にこれを全面否定したと米メディアが伝えている。
米テキサス州の地方紙「ヒューストン・クロニクル」によると、ブレグマンはあまり発言せず、アルトゥーベは率直に答えた。ブレグマンが「用意していた台本から逸れた」のは1度だけで、体に電子機器を付けてサインを解読していたというソーシャルメディアの噂を強く否定した時だったという。
「ノー、ノー、ノー、」
「それはただ馬鹿げている」
記事によると、それ以外ではブレグマンは静かだった。「コミッショナーが、レポートを作って決定を下した。アストロズも決定を下した。このことについてこれ以上、コメントはしない」と語り、他の質問についてもブレグマンは6度も同じような回答を繰り返したという。
一方のアルトゥーベも機器使用について全面否定した上で、こう話したという。「方法は分からないが、前を向いて進んで行かないといけない。1つにまとまったチームにならなければいけない。チームメートへの見方は何も変わっていない。彼らはこれまでで最高のチームメートだ。次のシーズンに向けて、毅然とした態度で前を向いて歩きたい」
25歳のブレグマンは昨季41本塁打、112打点。29歳のアルトゥーベは首位打者を3度、盗塁王を2度獲得している。2人のスター選手は電子機器使用について強く否定している。
58%のアメリカ人が「選手も処分すべき」
ESPNの調査は、依頼を受けた「Global Strategy Group」が全米の成人1100人を対象に実施。そのうち810人がMLBファンだという。
調査では、米国人の58%は、アストロズの選手がMLBによって処分されるべきだったと答えた。さらに米国人の72%、ファンの76%が、MLBがサイン盗みに関わった選手を処分するために次のステップに移ることをサポートすると答えている。
また、米国人の多くがドーピング/ステロイドのスキャンダルが、サイン盗みよりも悪質だと考えている(49%はドーピングの方が悪質、24%がサイン盗みの方が悪質)。一方、サイン盗みは、ピート・ローズの野球賭博よりも悪質だと答えた(44%がサイン盗みの方が悪質、25%がローズの方が悪質)。
サイン盗みで処分されたチームは、ワールドシリーズのタイトルを剥奪されるべきかという問いには意見が分かれた。アストロズの2017年のタイトルを剥奪すべきという意見は56%、翌18年のレッドソックスのタイトルを剥奪すべきという意見は53%だった。
これまでと変わらずにMLBの試合を見ると答えたのは、米国人全体、ファンともに60%。また、MLBファンの1/3はこれまでと変わらずに試合を見るが、アストロズとレットソックスの試合を見ることは少なくなるだろうと答えた。
74%の米国人と76%のMLBファンは、多くのチームがテクノロジーを使ってサインを盗んでいるが、アストロズとレッドソックスだけが今回明るみになったとも答えている。
MLBはアストロズの選手に対しては処分を科していない。しかし、米国人の58%が何らかの処分を科すべきと考えており、選手への風当たりは強くなりそうだ。
上原浩治氏がサイン盗み問題に持論
レッドソックスの前監督コーラ氏ら3球団の指揮官が解任されるなど、米球界を揺るがしている電子機器を使ったサイン盗み問題について言及。「(サインを)選手の目でちゃんと見破るのはいい。それをビデオとか機械を使って何かやっているってのはやっぱり良くないこと。ライン引きはした方がいいと思います」と持論を述べた。
昨季まで巨人のチームメートで、ブルージェイズと2年契約を結んだ山口俊投手(32)には「もちろん楽しみ。彼自身やりたいって気持ちがもちろんあったわけで、楽しくやってほしいなと思います」とエールを送った。自身については「(予定は)何もないです。日々を充実させたいですね」。上原氏が指導者としてグラウンドに戻ってくる日が楽しみだ。
レッドソックス主砲マルティネスがサイン盗み否定
レッドソックスの主砲マルティネスがサイン盗み疑惑を一蹴した。レ軍はワールドシリーズを制した18年に電子機器を使用してサイン盗みをした疑惑が浮上しており、現在大リーグ機構が調査中。
同年に43本塁打を放ち世界一に大きく貢献したマルティネスは、18日のファンイベントで「調査が終わるのが楽しみ。何もしていないことが明らかになるからね」とコメント。疑惑を完全否定した。
告発者のファイアーズ投手がチクリ屋呼ばわり
2017年アストロズのサイン盗みを告発したアスレチックスのマイク・ファイアーズ投手(34)が苦難にさらされている。アストロズのフィル・ガーナー元監督(70)は米ラジオ局KILTで番組出演。球史に残る大スキャンダルの発端となった右腕を非難した。
「あいつは“チクリ屋”呼ばわりされているぞ。なぜアストロズにいたころに言い出さなかったのか。一歩前に出て、止めなかったのか。おいしい思いをしておきながら、チームを出てから『もう我慢できない』だと。それはないだろう。ほとんどの選手がそう思っているよ」
昨季で現役を引退した2011年ワールドシリーズMVPのフリース元内野手も「分からないというよりイラつくのは、ワールドシリーズの優勝チームがズルしていたとか、元同僚が公に言うことだ。爆笑だよ。優勝リングを取り上げろ」とツイートした。
これに反発したのは、レッドソックスの主砲マルティネスだ。ファイアーズの友人は「あいつにとっては最悪だよ。あいつとも話はしたが、考え方は分かる。あの地区(アストロズと同じア・リーグ西)にいて、あの連中と対戦するんだから。居心地も悪かっただろう。なぜああしたこと(告発)をやったかは、分かるつもりだ」と擁護した。
3球団の監督後任は?
アストロズの不正なサイン盗みに関連してAJ・ヒンチ監督(アストロズ)、アレックス・コーラ監督(レッドソックス)、カルロス・ベルトラン監督(メッツ)の3人がその座を追われ、1月後半に3球団で監督が空席という異例の事態となっている。すでに各球団は新監督の決定に向けて動き始めており、ここでは各球団の最新の動向をチェックする。
監督候補として人気を集めているのがジャイアンツ、カブス、レッズ、ナショナルズで合計22年間指揮を執り、通算1863勝を挙げているダスティ・ベイカーだ。アストロズはバック・ショウォルター、ジョン・ギボンズ、ウィル・ベナブルに続く4人目の候補者として面接を実施する予定となっている。また、メッツも監督候補の1人としてベイカーをリストアップしていると見られる。なお、カブスの三塁ベースコーチを務めるベナブルは、アストロズの面接を受けたものの、カブスを離れる意思がないことを明言しており、少なくとも今季はどこかのチームで監督を務める可能性は低そうだ。
レッドソックスでは、チームOBのマイク・ローウェルが「条件付き」で監督を引き受ける意思があることを明らかにした。ローウェルは「1年限定で、なおかつコーラの監督復帰が保証されるのであれば、喜んで引き受けるよ」と発言。ローウェルとコーラは2006年から2008年までレッドソックスでチームメイトとしてプレイしており、ローウェルはコーラの監督復帰を後押ししたいと考えているようだ。
2006年にレッドソックスに加入したローウェルは、現役生活最後の5年間をレッドソックスで過ごし、2007年には自己最多の120打点を叩き出してオールスター・ゲームに選出。チームのワールドシリーズ制覇に貢献し、ワールドシリーズMVPを受賞している。
また、昨季限りでジャイアンツの監督を勇退したブルース・ボウチーは、現在空席となっている3球団の監督の座を引き受ける意思がないことを明らかにしている。パドレスとジャイアンツで合計25年にわたって監督を務め、通算2003勝をマークした名将は、将来的な監督復帰の可能性を否定していないものの、今季すぐにどこかのチームで指揮を執るつもりはないようだ。
ダルビッシュが見解
現役3監督が解任されることになったサイン盗み騒動。ここであらためて注目されたのが、2017年、ドジャース時代にアストロズとワールドシリーズで対戦した、ダルビッシュ有(現カブス)です。
ダルビッシュは、このワールドシリーズで第3戦と第7戦に登板。いずれも打ち込まれ、王座を逃す一因になったため、ドジャースファンから“Yu Garbage”(ユウはゴミ)とまで罵倒されました。しかし、相手にサインを盗まれていたことが明らかになると、この2度のKOも見方が変わって来ます。SNSでは、ドジャースファンから「ダルビッシュに謝ろう」という声も出ており、「申し訳なかった」という書き込みがあふれる事態に。
今回、「もしかすると、アストロズのワールドシリーズ制覇自体が通り消されるのではないか?」という噂もありましたが、この件に関してダルビッシュも英語でツイッターを更新。
「If the Dodgers are planning a 2017 World Series parade, I would love to join! So if that is in the works, can someone make a Yu Garbage Jersey for me?」
(ドジャースが2017年ワールドシリーズのパレードをやるなら、喜んで参加したい! もし実現したら、誰か「Yu Garbage」というネーム入りのユニフォームを作ってくれない?)
とユーモアと皮肉を込めてツイート。さっそく、背中に「Yu Garbage」と書かれたドジャースのユニフォーム画像をアップしたファンに、「I like it.」(いいね)と返しました。
またダルビッシュは、自らのYouTubeチャンネルで、このサイン盗み騒動について触れ、自分の考えを語りました。
「二塁ランナーが捕手のサインを覗き見て、打者に伝えることは多々あるし、その延長という感じで、アストロズも罪悪感なくやっていたと思う。だが、テクノロジーを使い始めると話が変わって来る。いくら配球を考えても、打者が先に球種を知っていたら、投手としては厳しい。そうなると駆け引きが成立しないし、野球じゃなくなる」
また、3年前のワールドシリーズの件にも触れ、「アストロズが何をやっていようが、抑えたピッチャーはいる。ワールドシリーズの結果は変えたくないし、ファンにいろいろ言われたことも含めて、それを乗り越えたことが自分の財産になっているので、謝罪とかは要らない」
これに対して、ファンからますます賞賛の声も上がっていますが、そもそも野球の魅力は、生身の人間同士が、鍛え上げた技を戦わせるところにあります。
「何でも最先端、というのがアメリカの野球のよくないところ。日本の野球は、そういう方向にテクノロジーを使ってほしくない」と語ったダルビッシュ。アスリートとして警鐘を鳴らす意見に、あらためて耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。
みんなの反応
サイン盗みはこれの印象が強すぎてそれ以外大したことなく感じるから清田育宏は偉大 pic.twitter.com/0WEswl7Wem
— あっと@オフシーズン (@renamed_373) January 17, 2020
サイン盗みが話題になってるけど、菅野智之クラスになると外角に張られても空振りを取っちゃうからな#Giants#菅野智之 pic.twitter.com/FiZB9iqlbr
— ハル (@hghg1265) January 17, 2020
アストロズの2017年からのサイン盗み露骨過ぎて許せねぇレベルだな pic.twitter.com/VocLpcDOJz
— ベーキャツ (@ka2bey) January 13, 2020
やっとサイン盗みが日本でも取り上げられたか
ワールドシリーズ アストロズ×ドジャースの第5戦
HOUのサイン盗みの伝達方法にホイッスルが使われてたという件
重要な場面での一打は殆どホイッスルが鳴っていたそう。アルトゥーベに同点ホームラン打たれた前田健太も被害者
pic.twitter.com/qdDo3Ml1Cr— トーラス (@_6NNTN) January 14, 2020
アストロズのサイン盗みのやつ
これはあまりに不自然だ😅 pic.twitter.com/3pcItUjgmZ— 🦈hoshi🦈@G党since1992🦈 (@kamesakamaruoka) January 16, 2020
FOX(フィラデルフィアローカル)のニュース番組で、アストロズのサイン盗み関連で真面目にゴミ箱にインタビューしてるの笑う。 https://t.co/izDJZae0IY
— 116 Wins (@116wins) January 15, 2020
アストロズのチーム打率
12年 30球団中29位
13年 26位
14年 25位
15年 21位
16年 24位サイン盗み開始
17年 1位
18年 7位
19年 1位アルトゥーベのように17年以前から活躍している選手もいるけどサイン盗みの効果絶大。
17年には青木も在籍。サイン盗みに関与していたなら残念すぎる
— ヤマユキ (@yamayuki60) January 14, 2020
アストロズのサイン盗みはユニフォームの下にブザーを仕込ませていたらしい。
ヤンキース戦でチャップマンから優勝を決めるサヨナラホームランを放ったアルトゥーベ。
本来ならユニフォームを脱がされたり手荒な祝福を受ける場面だが脱がされないように合図を送ったりガードしたりと不自然 https://t.co/TC2nQA6F7W— ヤマユキ (@yamayuki60) January 17, 2020
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